天気雨
天気雨のことを、どうして『狐の嫁入り』と言うのだろう。
夏になると時折、天気雨に出くわします。
突然降りだした夕立が止む頃。雲の切れ間から陽が覗くと、日射しを映やした雨粒の群がまるで自己主張をする光彩のように、夏山を背にして煌めきながら降り注ぐ。
道沿いの田んぼでは、濡れた稲が陽に照らされ背伸びをしていた。
仕事帰り、車の窓から目にした一枚の神々しい絵のような風景に心が和む。
いつの間にか、稲穂が随分と大きくなっていたことに今さらながら気づく帰り道。
今年の秋は台風が来ないといいのに…。
一日、一日を積み重ねてゆく暮らし。
つい頑張りすぎて心がささくれ立ちそうになることもあるけれど、いつも心に宿しておきたい天気雨。濡れた心で笑うことだって出来そうだから…。
ハンドルを握りトンネルを三つ抜けると、お帰りの町へと続く道。
雨のあがったバイパス道が、遠くまっすぐに伸びていた…。