夏の終わりに
車の屋根や薄いスレート板を叩く雨音、子供の頃はきっと今より大きく聞こえた。
激しく降る夏の夕立、路面で弾ける無数の雨粒が、まるで田んぼにたくさん植えられた丈の低い稲のように見えた。アスファルトの上に広がっていた雨が作り出す田んぼ模様。
陽を透かした葉は、よりたくさんの緑の重なりに見えたし、ろう石を手に落書きして遊んだ道は巨大なキャンバス。友人達と虫とり探検をした草むらは、うっそうとした下町のサバンナで、公園で鳴くツクツクホウシの声は、近付く夏休みの終わりを告げていた。
泣いたり、笑ったり、怒ったり、沢山の思いが詰まったふるさとの町が、まるで世界の半分よりも大きかった子供の頃。
道を歩けばクラスメイトや近所のオジサン、オバサンと会い、誰からとなく声をかけられた。本当はとても狭くて、子供の秘密一つだってあるのかないのかわからなかった小さな町…。
いつからかそんなふるさとは、もっともっと小さくて遠い町になった。
はるか彼方の離れた町で、季節の移ろいを目に暮らす今の日常。
山の上から(お~い…)と叫んでみても、届かないくらいに遠い町。^-^
会社帰りの田んぼでは、今年も稲刈りが始まり秋の気配。コオロギもコロコロと鳴いている。
家へ帰ると家族と暮らす音がして、会社へ行くと仕事をさばく音がする。
そんな繰り返しの日常が煩わしい訳じゃないけれど、時折雑踏のかけらもない空間で一人になりたい私。
海峡を行き交う船の軌跡、風が吹き抜ける木々のざわめきに樹上で鳴く鳥の声。そして音のない日溜まり…。
穏やかな心持ちでくつろぐ自分がいる。
ふるさとを思い出す度に、私は素の自分に戻って問いかける。
正直でなくなってないかい…?
そんな夏の終わりのつぶやき。
今年もやがて実りの秋がやってくる。
食いしん坊な私は、こと食欲に対しては正直でなくなることはない。^-^
今年も秋が深まるにつれ、美味しい焼き芋を探しにドライブへ行こうと思う。🍠
ただまっすぐな子供のように、美味しい焼き芋が食べたいと思った曇天の休日…。